A02 自由エネルギー原理に基づく深層生成モデルに関する研究
近年、深層学習に基づく人工知能の進歩が目覚ましいと言われています。しかし、「ヒトのような知能を実現する」という視点に立って考えると、大量のデータを事前にヒトが用意する必要があり、また入力から出力への一方向の対応関係のみを学習しているという課題があります。一方、神経科学領域で着目される自由エネルギー原理では、生物の推論・行動・学習を同一の枠組みで捉えることができ、外界と相互作用して能動的な情報処理を行うことが自然に導かれますが、大規模かつ多様な観測での検証は行われていませんでした。
本研究では、深層生成モデルを用いて、大規模な観測を扱う自由エネルギー原理に基づく推論・行動・学習の各手法を提案します。本研究によって、大規模環境と相互作用し、能動的に推論や学習をするヒトに近い知能の実現を目指すことになります。また、設計した深層生成モデルを大規模なヒトの神経活動データから学習し、ヒトの脳活動や認知活動と照らし合わせることで、構成論的アプローチによる知能の解明を目指します。本研究は、深層生成モデルを設計するという形で知能構造に関する仮説を導入し、自由エネルギーを目的関数として学習や推論を行うという点で、研究領域全体の目標である「予測と行動の統一理論」の確立のためのトップダウン的なアプローチと考えられます。