予測と行動の統一理論の開拓と検証
C02 雨森賢一

C02 雨森賢一

C02 予測符号化と不安の制御:霊長類辺縁系の階層ネットワークの解明

霊長類の領野間の相互作用は、特に視覚野において「予測符号化」という計算論モデルに基づく解析が行われている。選択的注意に関わる神経振動の同期が、高次から低次の視覚野に対して影響を与え、視覚の選択に関わることが示されたが、グレンジャー因果性解析で神経振動の影響の方向性を示すと、解剖学的に示唆されてきた視覚野の階層性に相関することが明らかになっている。解剖学的な階層性は、大脳皮質4層に逆行性トレーサーを打ち、浅層からの投射をフィードフォワード(FF)、深層からの投射をフィードバック(FB)として分類することで定義される。一方、生理学的な信号であるガンマ波・ベータ波の神経振動は、解剖学的な階層性に沿った方向性を持ち、予測符号化などの計算原理の神経実装に対応すると考えられる。


上記の階層的な大規模ネットワークの構成原理は、うつや不安障害などの精神疾患に関わる「辺縁系皮質と認知系皮質の間の相互作用」にも当てはまるのだろうか?この問いに答えるため、我々は、マカクザルに不安の定量化を行うための葛藤課題を訓練し、課題遂行中のサルの認知系皮質・辺縁系皮質・線条体の様々な領野から局所電場電位(LFP)を同時記録してきた(図A)。これらのデータと新規に獲得するデータをもとに、神経振動のグレンジャー因果解析、スパイク駆動 LFP解析など、神経信号の方向性を明らかにするネットワーク解析法を行い、神経振動の影響の方向性・階層性を明らかにする(図B)。LFP記録中に微小電気刺激法(electriocal microstimulation EM)を行い、実際に不安障害に似た悲観的な意思決定を引き起こした際のネットワークの相互作用の変化を明らかにし、うつや不安といった病態の特徴を明らかにする(図C)。最後に、辺縁系皮質・認知系皮質に対し、深層と浅層を区別しながら EMを行い、活動が引き起こされる領野をfMRIで識別し、解剖学的な階層性に対応する脳領野を同定し、不安ネットワークの階層性を調べる(図D)。

研究代表者

雨森 賢一

京都大学 ヒト生物学高等研究拠点 特定拠点准教授

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