C02 長井淳

C02 グリア－神経回路ダイナミクスに基づく予測の理論の開拓と検証

脳の情報処理はミリ秒スケールで行き交う神経シグナルによって支えられています。これに対して、グリア細胞は神経細胞のように電気信号を伝播せず、形態学的にもシグナルの入出力に特化した構造が観察されなかったため、従来の考えでは脳の情報処理には関与しないとされてきました。しかし、最近の研究で、グリア細胞の一種であるアストロサイトが感覚入力や行動に伴い、数秒スケールのCa²⁺シグナルを示すことが明らかになりました。神経細胞の活動電位やCa²⁺シグナルに比べて遅いCa²⁺シグナルがどのような情報を符号化しているのか、また脳の情報処理にどのように関与しているのかは、まだ明確になっていません。

本研究では、学習タスク中のマウスを用いて２光子顕微鏡でCa²⁺イメージングを行い、アストロサイトの数秒にわたる遅いシグナルの情報処理における意義を解明します。特に、感覚入力、報酬の予測、行動制御などの脳の基本的な機能に関連して、アストロサイトと神経細胞がどのように活動するかを計測します。また、これらのグリア・神経回路ダイナミクスのデータをモデル化し、学習に伴う変化を予測、実験データと比較することでモデルの妥当性を検証し、グリア細胞の活動を取り入れた新たなモデルの確立を目指します。