予測と行動の統一理論の開拓と検証
C02 小川正晃

C02 小川正晃

C02 報酬予測誤差に能動的に対処する神経メカニズムと計算アルゴリズム 

ヒトは日常的に、現状より高い目標を設定し、その達成のために多くの時間や労力を費やす。途中で結果が思い通りに行かずに期待外れが生じても、それを受入れ目標を諦めるよりは、むしろそれを能動的に乗り越えることで将来の成功に繋げる。自然界では、大抵の場合はすぐには成功しない、そして多くの場合その対象が限定的な採餌行動や求愛行動において、期待外れに能動的に対処できなければ、種の存続に影響する。このように普遍的に重要であるにも関わらず、従来、期待外れを乗り越えるための予測や行動を担う神経メカニズムは不明であった。報酬系の中心である中脳ドーパミン細胞は、従来、報酬価値に関する予測誤差を担い、期待外れという陰性の報酬予測誤差に対して行動を弱化すると考えられてきた。一方小川研究室は、「期待外れの際に活動を増し、期待外れの後でも報酬を求め続ける行動を強化する」ドーパミン細胞を見出した(Ishino et al., Science Advances, 2023)。本研究は、独自の行動課題をラットで開発し、中脳ドーパミン回路を対象とした最先端の神経活動計測・操作技術とデータ駆動的数理モデリングを導入して、新規ドーパミン細胞が担う計算アルゴリズムと行動に果たす因果的役割を解明する。

研究代表者

小川 正晃

滋賀医科大学 生理学講座 生体システム生理学部門 教授

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