予測と行動の統一理論の開拓と検証
C02 吉田正俊

C02 吉田正俊

C02 能動的推論によるアクティブ・ヴィジョンの解明

我々が眼で外界を知覚することは視覚シーンをカメラのように受動的に映し出すことではない。空間分解能の高い中心窩を急速眼球運動(サッケード)によって移動させながらサンプルされる情報から構成することだ。このように視知覚が行為によって構成される側面を「アクティブ・ヴィジョン」と呼ぶ。自由エネルギー原理(FEP)/能動的推論(AIF)によれば、視線移動が行っているのは、感覚情報(網膜の活動)から外界に何があるかについての信念を更新することであり、網膜に写った感覚情報を張り合わせた写真を再構築しているわけではない。この点でFEP/AIFはアクティブ・ヴィジョンの概念と整合的である。

AIFによればある行動a から期待される将来の変分自由エネルギーの期待値 G(a) (期待自由エネルギー) は図のように表現できる。ここでベイジアン・サプライズとは、将来ある行動選択a をしたときにどのくらい将来の信念が変化するかを表している。そしてベイジアン・サプライズが最大となる行動 a を選ぶと、相互情報量MIの最大化を実現し、期待自由エネルギーG(a) を最小化する。つまり従来、視覚サリエンスのモデルで「目立つところに視線が誘引される」と説明されていたものが、ベイジアン・サプライズを使うことで「(シーン理解において)よりinformativeなところに視線が誘引される」と、シーン理解と視線移動とを統合した形で説明できる。

そこで本研究は「ベイジアン・サプライズ」が脳内で処理されているか検証することを目的とする。この目的のため、マーモセットを対象とした行動課題と内視鏡型Caイメージング装置による頭頂連合野PPCおよび前頭眼野FEFからの神経活動の同時計測を行う。1) 視覚性ミスマッチ課題においては、方位刺激などさまざまな刺激特徴で、サプライズに関わる神経活動を見出す。2) フリービューイング課題においては、視覚特徴とベイジアン・サプライズと眼球運動のエンコーディングモデルを構築する。3) ヒトを対象とした視覚シーンの認知課題を用いてアクティブ・ヴィジョンの生成モデルの推定法を確立する。

研究代表者

吉田 正俊

北海道大学 人間知・脳・AI研究教育センター 教授

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研究協力者
纐纈 大輔
生理学研究所 認知行動発達機構研究部門 特任研究員