A03 推定と制御の双対性に基づく感覚野と運動野の神経回路機構の解明
大脳皮質はcanonical circuitと呼ばれる6層の回路構造を持っています。視覚野や体性感覚野など大脳の後半分は主に感覚認知に、運動野、前頭前野などの前半分は主に行動制御を担っていますが、共通の回路構造がなぜ感覚認知と行動制御という異なる機能を実現できるのかは、謎である以前に問題にもされて来ませんでした。しかし近年、control as inferenceという理論的な枠組みのもとで、知覚のためベイズ推定と行動のための強化学習が共通の計算手法で実現可能なことが明らかになり、新たなアルゴリズムの提案と応用が進んでいます。
本研究では、ベイズ推定と強化学習の双対性を手がかりとして、メッセージパッシング、変分自由エネルギー近似などのアルゴリズムが、大脳皮質の神経回路でいかに実現可能かについていくつかの仮説を設定し、それらを計算機シミュレーションとマウスの脳活動計測実験により検証します。